日本には数多くの城がありますが、その中でも「木造復元天守」はアサヒテレビ
「羽鳥慎吾のモーニングショー」でも取り上げられ、とても注目されています。
近代では鉄筋コンクリートによる再建が一般的でしたが近年、あえて木造で復元
する動きが増えているのです。
しかし、なぜ現代において木造で復元するのでしょうか? 木造建築はコストや耐久
性の面で課題もあるはず。それにも関わらず、全国で木造復元が進む背景には、
歴史的価値や文化財保護、さらには観光資源としての魅力が関係しています。
この記事では、木造復元天守5城がどこにあるのかを紹介するとともに、なぜ木造
で建てたのかを詳しく解説します。
歴史好きの方はもちろん、城めぐりが好きな方にも必見の内容です!
木造復元天守5城はここ!
現在、日本にはいくつかの「木造復元天守」がありますが、その中でも特に注目される
5つの城を紹介します。
これらの城は、歴史的な価値を重視し、当時の工法や素材を用いて再建されました。
掛川城(静岡県)
📍 場所: 静岡県掛川市掛川1138-24
🏗️ 木造復元年: 1994年(平成6年)
🕰️ 築城年: 1513年(戦国時代)
歴史
掛川城は、今川氏の家臣・朝比奈泰煕(あさひなやすひろ)が築城した城です。
戦国時代には今川氏の支配下にありましたが、のちに徳川家康が奪取し、江戸時代
には山内一豊が大規模な改修を行いました。明治時代の廃城令により天守は取り
壊されました。
本格的な木造天守閣の建設は掛川城が全国でも初めてで、それだけに実施設計は
難しく、工事費は鉄骨で行えば6億円位だが木造でやればその倍になるといわれて
いましたが、篤志家より掛川市に5億円もの寄付があり、多額の寄付金により
財政的にも現実的なものになり、平成2年(1990年)8月から復元工事が行われ、
平成6年(1994年)4月に竣工、一般公開されました。
見どころ
✅ 現存する二の丸御殿 は、国の重要文化財に指定されいて、江戸時代の大名
の住居空間がそのまま残されています。
✅ 天守最上階からは掛川市内を一望でき、晴れた日には遠く富士山が見える
こともあります。
✅ 木造復元のため、木の香りや温かみが感じられ、歴史的な雰囲気を存分に
楽しめます。
白石城(宮城県)
📍 場所: 宮城県白石市益岡町1-16
🏗️ 木造復元年: 1995年(平成7年)
🕰️ 築城年: 1591年(安土桃山時代)
歴史
白石城は、伊達政宗の重臣である片倉小十郎景綱(かたくらこじゅうろうかげつな)
の居城として知られています。
江戸時代には、伊達家の支城として重要な役割を担い、幕末には奥羽越列藩同盟の
拠点にもなりました。
明治7年に解体されましたが、伊達政宗の片腕として名をはせた片倉小十郎景綱の
偉業を偲び、平成7年に三階櫓(天守閣)と大手一ノ門・大手二ノ門が史実に忠実
に復元されました。
見どころ
✅ 天守内には、片倉小十郎ゆかりの資料が多数展示されており、伊達家の歴史
に触れられます。
✅ 天守からは、白石市街や蔵王連峰が望める絶景が広がります。
✅ 冬の雪景色の中にそびえる白石城は、白と黒のコントラストが美しく、写真映え
するスポットとしても人気です。
白河小峰城(福島県)
📍 場所: 福島県白河市郭内1
🏗️ 木造復元年: 1991年(平成3年)
🕰️ 築城年: 1340年(南北朝時代)
歴史
白河小峰城は、南北朝時代に結城親朝(ゆうきちかとも)によって築かれ、
江戸時代には幕府直轄の城として重要視されました。
戊辰戦争の白河口の戦いでは、奥羽越列藩同盟軍と新政府軍の間で激戦が繰り
広げられ城は焼失しましたが、発掘調査や当時の絵図をもとに平成3年(1991)
に御三階櫓、平成6年(1994)に前御門が木造で復元され、往時の面影がよみ
がえりました。
御三階櫓では白河口の戦いの激戦地だった松並稲荷山の杉を使用したため、部材
に当時の弾痕が残っています。
見どころ
✅ 城の周囲には見事な石垣が残っており、築城当時の石積み技術を間近で見る
ことができます。
✅ 城の近くにある「南湖公園」は、日本最古の公園として知られ、四季折々の
自然が楽しめるスポットです。
✅ 春には桜が咲き誇り、お花見スポットとしても人気です。
新発田城(しばたじょう)(新潟県)
📍 場所: 新潟県新発田市大手町6-4-16
🏗️ 木造復元年: 2004年(平成16年)
🕰️ 築城年: 1598年(安土桃山時代)
歴史
新発田城は、豊臣秀吉の家臣・溝口秀勝(みぞぐちひでかつ)によって築かれ、
のちに溝口家の居城として江戸時代を通じて使用されました。
2004年(平成16年)に復元し、江戸時代に再建された当時の姿をよみがえらせ
ています。
特徴的なのは棟がT字型をしていて、3つの入母屋造りの屋根に「3匹の鯱
(しゃちほこ)」が配置されています。これは全国でも非常に珍しく、新発田城
のシンボルとなっています。
見どころ
✅ 三階櫓が木造で忠実に復元されており、歴史ファンに人気。
✅ 周囲の堀には美しい蓮の花が咲き、夏場は特に風情があります。
✅ 城の一部は自衛隊の駐屯地として使用されており、全国でも珍しい
「現役の軍事施設を持つ城」としても知られています。
大洲城(愛媛県)
📍 場所: 愛媛県大洲市大洲903
🏗️ 木造復元年: 2004年(平成16年)
🕰️ 築城年: 1331年(南北朝時代)
歴史
大洲城は、南北朝時代に宇都宮豊房(うつのみやとよふさ)が築城し、江戸時代
には加藤氏や脇坂氏が城主を務めました。
明治の廃城令によって他の城が次々と取り壊されていく中、政府から民間に
払い下げられたため個人所有となり取り壊しを免れましたが、明治21年(1888)
になって老朽化のために天守は解体されました。しかし、4つの櫓は元のまま残
されました。
地元市民による寄付などで、2004年に念願かなって四層四階の複連結式天守が
復元されました。
復元にあたっては、明治時代の古写真や「天守雛形」と呼ばれる江戸期の木組み
模型など豊富な資料を基に当時の姿を正確に復元されました。
見どころ
✅ 全国で唯一、天守内に宿泊できるキャッスルステイプランがあります。
✅ 天守内には、地元の歴史や文化に関する展示が充実しています。
✅ 夕暮れ時には、肱川(ひじかわ)沿いの景色とともに、幻想的な城の
シルエットが楽しめます。
木造復元天守とは?
全国には「復元天守」と呼ばれる城がいくつもありますが、その中でも
「木造復元天守」は特別な存在です。
戦国時代や江戸時代に建てられた天守は、明治時代の廃城令や戦災などで多くが
失われました。その後、昭和・平成にかけてコンクリート製の復元天守が数多く
建てられましたが、近年はより歴史的価値を重視し、木造での復元が進んでいます。
復元天守と現存天守の違い
復元天守とは、過去に存在していた天守を歴史資料などをもとに再建したものです。
一方で、「現存天守」は江戸時代以前に建てられ、現代まで残っている貴重な城を
指します。
日本には12の現存天守があり、これらは国宝や重要文化財に指定されることが多い
です。復元天守の中でも、特に木造で建てられたものは、当時の工法や素材を再現
するため、より本物に近い姿を持つのが特徴です。
なぜ鉄筋コンクリートではなく木造なのか?
昭和の復元ブームでは、鉄筋コンクリート製の天守が主流でした。これは耐震性
が高く、建築コストも比較的安いという理由から採用されたものです。
しかし、鉄筋コンクリートの耐久性は50~60年ほどと言われており、実際に老朽
化が進んだ城も増えています。
例えば、大阪城や名古屋城のコンクリート天守は、老朽化のために補修や建て替え
の議論が進められています。
一方で、木造建築は適切な管理をすれば数百年持つ とされ、現存する木造天守が
その証明となっています。
姫路城や松本城などの現存天守は、何百年も前に建てられたものですが、適切な
補修を重ねながら今でも美しい姿を保っています。
これらの理由から、近年ではより長期的に維持できる木造復元が注目されるように
なっているのです。
木造復元のメリットと課題
木造での天守復元には多くの利点がありますが、一方でいくつかの課題も伴います。それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット
✅ 耐久性が高い
- 適切に管理すれば400年以上の寿命を持つと言われており、50年程度で劣化する
鉄筋コンクリートに比べて長持ちする。 - 実際に、現存する木造天守(姫路城、松本城など)は江戸時代から現在まで維持
されている。
✅ 文化財としての価値が高い
- 伝統技法を用いた建築は、歴史的・文化的価値をより忠実に再現 できる。
- 木材の質感や匂い、音の響きまで体験できるため、観光客にも人気が高い。
✅ 職人の技術継承に貢献
- 木造建築は、宮大工や伝統的な建築技術を必要とするため、後継者育成の場
になる。 - これにより、日本の伝統技術の存続 にも貢献できる。
✅ 地震への耐性がある
- 一見すると鉄筋コンクリートの方が強固に思えるが、木造は適度なしなりがあり、
地震エネルギーを分散しやすい。 - 現存する木造天守が何百年も地震を耐え抜いてきた事実が、その耐久性を証明
している。
課題
❌ 建築コストが高い
- 鉄筋コンクリートに比べて建築費が2倍以上かかることも ある。
- 高品質な木材の確保や、熟練した職人の手作業が必要なため、コストが膨らむ。
❌ 維持管理が大変
- 木材は湿気や害虫の影響を受けやすく、定期的な補修や防腐処理が必要 になる。
- 火災のリスクもあるため、防火対策が重要。
❌ 建築規制が厳しい
- 文化財の復元には厳しい基準があり、工法や材料の選定に制約がある。
- 近代建築の安全基準を満たしつつ、歴史的な正確性を維持するのが難しい。
❌ 完成までに時間がかかる
- 木造復元は、鉄筋コンクリートに比べて工期が長くなる。
- 例えば、名古屋城の木造復元計画では、着工から完成まで約10年 かかる見込み。
木造復元が進む理由とは?
近年、木造での天守復元が進んでいる背景には、いくつかの重要な理由があります。
単なる「昔の建築様式を再現する」だけでなく、文化財としての価値や観光資源とし
ての魅力、さらには技術継承の側面も関係しています。
文化財としての価値を重視
鉄筋コンクリートの復元天守は、見た目こそ昔の城に似ていますが、構造や内部の
造りは現代的な建築物です。そのため、歴史的な価値が低く、本来の城の姿を十分
に伝えられないという意見もあります。
一方、木造復元は当時の工法や材料を忠実に再現するため、より本物に近い形で
文化財としての価値を高めることができます。
観光資源としての魅力
木造の城は、見た目だけでなく、木の香りや質感、音の響きなど、訪れる人々に
リアルな歴史体験を提供します。これにより、観光地としての魅力が増し、多くの
人々を引きつける要因になります。
例えば、大洲城の木造復元が成功したことで、観光客が増加し、地域経済の活性化
にもつながりました。
技術継承と職人育成の目的
伝統的な木造建築の技術は、日本の貴重な文化遺産です。しかし、近代化に伴い、
こうした技術を持つ職人の数は減少傾向にあります。
木造復元天守の建設は、伝統技術の継承(大工、左官、瓦職人、国の卓越した伝統
技術を継承していく)や職人の育成にも貢献しており、次世代に大切な技術を残す
役割も果たしています。
宿泊できるお城!場所や宿泊費
日本には、お城の中に宿泊できる特別な施設がいくつかあります。
本物の歴史を感じながら、殿様や姫の気分 で一夜を過ごせる貴重な体験が
できます。
ここでは、宿泊可能な城の場所や料金、宿泊の特徴を紹介します!
竹田城 城下町 ホテル EN(兵庫県)
🏯 場所: 兵庫県朝来市和田山町竹田上町西側363
💰 宿泊費: 1泊2食付き 約30,000円~/人
📌 特徴:「日本のマチュピチュ」とも呼ばれる竹田城の城下町にある歴史的建物
を改装したホテル。
- 客室は城の雰囲気を残しつつ、モダンなデザインにリノベーション。
- 地元の食材を使った豪華な料理が楽しめる。
- 竹田城跡へ早朝ハイキングも可能!
🔗 公式サイト: https://www.takeda-hotel.com/
佐賀城本丸歴史館(佐賀県)※特別宿泊プランあり
🏯 場所: 佐賀県佐賀市城内2丁目18-1
💰 宿泊費: 1泊 約10,000円~(特別企画時のみ)
📌 特徴:
- 通常は歴史資料館だが、特別なイベント時に1泊限定で城内に宿泊できる
ことがある。 - 江戸時代の武家文化を体験できる。
- 予約は事前に申し込みが必要で、特別プランとして開催されるため、
タイミングが重要。
🔗 公式サイト: https://saga-museum.jp/sagajou/
大洲城 キャッスルステイ(愛媛県)
🏯 場所: 愛媛県大洲市大洲903
💰 宿泊費: 1泊 1組 550,000円~(最大2名まで)
📌 特徴:
- 全国初!天守に宿泊できるお城。
- 1日1組限定の超特別体験!
- 宿泊者には「城主」としての体験ができ、殿様のような待遇を受ける。
- 豪華な会席料理や、城内を貸し切りで楽しめる贅沢なプラン。
🔗 公式サイト: https://www.ozucastle.com/
木造復元天守を訪れる際のポイント
木造復元天守は、歴史的な価値だけでなく、観光スポットとしても人気があり
ます。訪れる際に知っておくと役立つポイントを紹介します。
見どころや撮影スポット
木造復元天守の魅力は、細部にまでこだわった木組みや伝統的な建築技法に
あります。
例えば、大洲城では「木材の組み方」をじっくり観察すると、現代の建築とは
違う特徴が見えてきます。
白河小峰城では、美しい白漆喰の壁と石垣のコントラストが写真映えする
ポイントです。
訪れる際は、建築の細部や景観を楽しみながら撮影すると、より魅力が伝わる
でしょう。
まとめ
木造復元天守は、単なる観光スポットではなく、日本の歴史や伝統技術を後世に
伝える貴重な建築物です。
かつて鉄筋コンクリートでの再建が主流でしたが、木造ならではの耐久性や文化財
としての価値 が見直され、近年は木造での復元が増えています。
今回紹介した 5つの木造復元天守(掛川城、白石城、白河小峰城、新発田城、大洲城)
を巡れば、各城ごとの違いや魅力を体感できます。
また、なぜ木造で復元されたのかを知ることで、より深く日本の城の歴史を理解
できるでしょう。
今後、名古屋城の木造復元が計画されていますが、実現すればさらに木造復元の
流れが加速するかもしれません。
歴史好きの方も、観光目的の方も、ぜひ一度 木造復元天守を訪れ、その魅力を
体験してみてください!